近年の地球温暖化を取り巻く情勢に伴い,多くのCO2排出削減方策が提案されている.民生部門の対策の大半は建築物に関するものであるが,建築物に容易に導入できるCO2排出削減方策として高反射高放射塗料が挙げられる.
しかし,高反射高放射塗料の導入は,冬期の暖房需要を増大させてしまう可能性があり,住宅のように暖房需要が冷房需要を上回る可能性がある場合は,却って,年間CO2排出量を増加させてしまう.このとき,夏期のみ高反射高放射塗料を導入し,冬期・中間期は標準外表面のままにする,という方策が考えられる.さらに,現在は開発されていないが,低反射低放射性の外表面にして暖房需要を削減するという方策もありうる.
以上の対策に関して、後退差分法による多数室室温計算手法を提案し,その手法をもとに開発したプログラムを用いてCO2排出削減効果の評価をおこなった.
住宅に関しては,高反射高放射塗料を導入すると,夏期の冷房需要を削減できるものの,冬期の暖房需要を増大させてしまい,却ってCO2排出量を増加させてしまう.しかし,夏季に限定して高反射高放射塗料を用いれば,CO2排出削減方策として有効に機能することがわかった.また,現在は未開発である低反射低放射性外表面を冬期・中間期に用いることによって,10%を超える空調需要起源のCO2排出量が削減できることも分かった.
これらの方策は,断熱材が入っていない建築物に関しては効果的な対策といえる.建築施工時にしか導入できない断熱材に比べ,施工後も導入可能であるこれらの対策は,既存の非断熱・低断熱住宅のCO2排出削減方策として有効であると考えられる.