高反射高放射塗料は,建築物の冷房需要削減および都市環境のヒートアイランド緩和効果が期待されるが,既往研究のほとんどはシミュレーションによる評価が中心であり,実際の塗料物性に関する研究は少ない.本研究では,東京大学工学部4号館屋上(東京都文京区)に試験体を設置,高反射高放射塗料を塗装することで,実際の塗料の物性値を分析した.4か月にわたる計測の結果,次のことが分かった.
まず,高反射高放射塗料の日射反射率は暴露日数とともに低下することが分かった.しかし,日射反射率は著しくは低下せず,また降雨や大気汚染物質の濃度変化など何らかの気象変化により,上昇する可能性も確認された.
次に,計測された気象観測値を用いて非定常熱負荷計算をおこない,算出された試験体内温度と実測の試験体内温度を比較することにより,今回用いた非定常熱負荷計算プログラムが塗料の評価に有効かどうかの検証をおこなった.そのところ,温度振幅が小さいものの,決定係数が0.9超と,おおむね一致することが分かった.
今回のデータ解析は暫定的なものであり,今後も計測および解析を進めていく予定である.