不明な点があれば、井原までどうぞ。E-mail(ihara-t/aist.go.jp)でも、また、直接来ていただいても(工学部4号館228研究室)構いません。
質問は、[Q1]〜[Q4]の計4問でした。
メソスケールモデル(MM)において排熱計算を組み込んでいる研究例(亀卦川[2])がある、という説明でしたが、それは、MMそのものに排熱特性を表現する計算が入っている、ということなのか?
亀卦川らは、都市キャノピーモデル(CM)にビルエネルギー・排熱計算を組み込み、都市キャノピー-ビルエネルギー・排熱モデル(CM-BEM)を作成しました。さらに、CM-BEMの各気層とMMの対応する各気層を連立させ、解くこと(陽解法)で、MM/CM-BEMを作成し、結果、MMレベルでも排熱特性が考慮できるようになっています。
民生部門の人工排熱曲線は、気温が変化しても変わらないと仮定し、固定しているのか? もし、そうだとすると、気温の影響を考慮した繰り返し計算をおこなう必要性がどれだけあるのか? 繰り返し計算をおこなうまでもなく、ほとんど民生部門の排熱需要曲線に結果が左右されると思うのだが。
民生部門の人工排熱曲線は、建築仕様データ・スケジュールデータのほか、気象データを計算条件として作成されます。スライド7に示したように、気象データは、都市熱環境計算(メソスケールモデル)の計算結果を利用して改訂するので、繰り返し計算をおこなう必要が出てきます。
なお、繰り返し計算の回数ですが、民生部門における空調需要・人工排熱は都市気温の影響を強く受けるものの、都市気温はそれほどには人工排熱の影響を受けないのではないだろうか、といわれており、2-3回程度ですむ(収束する)と考えています。
人工排熱データを作成するために必要となる交通需要(BAU)は、排ガスの質や量も含めて、どのように決定しているのか? もしくは、運輸排熱は無視しているのか?
運輸部門の人工排熱は、速度別の排熱量と都市域の交通量より作成するのが望ましいと考えますが、本研究で用いている人工排熱データ(資源環境技術総合研究所により作成)では、全く異なる手法を用いて運輸部門の人工排熱を作成しています。
すなわち、都市部におけるガソリンの販売量のデータをもとに、全体の排熱量を作成し、そして道路によらず道路面積ごとの交通量を一定と仮定し、メッシュ毎に道路面積に応じて全体の排熱量を割り振っています。ただし、メッシュ毎の排熱量を時刻ごとに分配する際には、いわゆるODデータを用いていると見られます。
ヒートアイランド現象に強く影響するのは、赤外域の光だと考えていたのだが、どうなのか?
ヒートアイランド現象は、自然状態と比較して、地表面の熱収支が変化しているためにおこっている現象といえます。地表面の熱収支のうち、最も大きな割合を占めるのが、太陽放射の入射ですが、太陽放射は、大部分が可視光(一部、近赤外光)であり、地表面への入射量を抑えるためには、地表面の可視域光反射率を高くする必要(高アルベド化)があります。